万里さんの「情報プラットフォーム」

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紹介・見田宗介著『現代社会はどこに向かうか』

万里の「いのちと食・情報プラットフォーム」――「農業・食料カフェ」にようこそ

 

2019年の万里の思考と実践を下記の小稿にまとめました。お暇な時にでもお目通し下さい。

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〈紹介〉見田宗介著『現代社会はどこに向かうか』(岩波新書・2018刊)

         と生活要求運動50年の気づき

山崎万里(母性史研究・家庭栄養研究会)

 

 

《はじめに》〉

2019年、私はいくつかの印象的な言葉に出会った。「私たちこのままでいいんですか」(映画「新聞記者」での記者のセリフ)、「そろそろほんとうに生きるときがきた――」(第160回直木賞・小説『宝島』(真藤順丈著・講談社の最後の一言)、「アベノミクスは『終わりの始まり』である。われわれに残された時間は多くない」(『平成経済 衰退の本質』(金子 勝著・岩波新書の最後の一行)。

これらは、今を生きる者にとって時代の曲がり角を思わせる。

すでに2015年国連サミットはSDGsSustainable Development Goals)を採択し、2016年〜2030年を持続可能な世界を実現する17の開発目標と「誰一人とりのこさない」をかかげて動き出している。

 

《見田宗介著『現代社会はどこに向かうか』》

(1)現状認識

社会学者見田宗介氏は生物種の消長を示す生物曲線・ロジスティック曲線(*1)を用いて、人間社会にも適用できる事態がすでに始まっていると警告している。

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(図・ロジスティック曲線)――孤立した森のある動物種は緩やかな増殖をつづけ、ある時期から爆発的な増殖期を迎え、やがてこの森の環境容量の限界に近づく。環境資源をこれまでどおりに消費しつづければ滅亡する(破線)。種の存続のためには食糧とライフスタイルを新たな状況に適応させていかなければならない(実線)。

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「『近代』=高度成長期の人間は自然を『無限』の環境、『征服』の対象としてきたが、グローバリゼーション以降=『現代』の人間にとって自然は『有限』の環境、『共生』の対象である」と。つまり、20世紀後半の情報化社会、消費化社会はグローバリゼーションという事実によって、無限の発展の前提である環境と資源の両面において、地球という惑星の〈有限性〉と向き合っている。現代の人間が直面しているのは、この「世界の有限性を生きる思想」を確立するという課題であるという。

そこで、「現代社会がどういう曲がり角にあるか」、そして「人間の精神はどのような方向に向かうか」を指し示す理論を構築するための実証を次の諸点で試みている。

  1. 世界の人口増加率が1970年を折り返し点とし

て急速かつ一貫して低下している。

  1. 日本では、経済成長のために戦ってきた近代家

父長制家族は根拠を失い、女性と青年が平等と自由をもとめて声をあげている。

  1. NHK放送文化研究所「日本人の意識調査(1973

年〜)と社会科学者国際プロジェクト「世界価値観調査」(1981年〜)のデーターから、日本と先進諸国の青年たちの価値感覚がシンプル化、ナチュラル化してきていることを示し、青年たちがすでに「理論による認識に先立って、生活感覚によって、環境容量のこれ以上の拡大を必要としない方向で生き始めている」=(実線の方向で生き始めている)。

ぁ屮螢好社会論」の立場から、「競争を活性化と成長の原理とする固定観念」は「新しい危機を誘発するほかない」=(破線の方向に向かうほかない)。

「豊かな社会」とは経済成長の問題ではなく分配の問題である、と成長至上主義を批判する。

(2)世界を変える二つの方法

見田氏は、この生命曲線の分岐点にある現在、20世紀の革命の破綻から学び「否定主義(取りあえず倒す)・全体主義(発展のために全体主義を是とする)・手段主義(目的のために今の我慢を強いる)」を乗り越えることを主張する。そして、持続可能な社会に向かう変革の二つの方法として「多様であること」と「内発的発展を肯定的に積極的につくりだしていくこと」を強調する。さらに、「肯定的な構想を力とする・小さい集団・共存のルール・自由な連合・現在を愉しむ・活動自体が心躍り,開放されていなければならない」と説き、最後に「自由と魅力性による解放だけが、あともどりすることのない変革である」と期待している。

 

《生活要求運動50年の気づき》

  • 国連は201811「農民の権利宣言」を採択し、

農民が自国の食糧・農業政策を決める主役であると宣言した。そして、2019年〜2028年「国連家族農業の10年」を具体化しつつ、持続可能な社会(実線の方向)を目指している。

片や日本政府は、主要農産物を守る種子法を廃止し、農業競争力支援法を制定、日米FTAに屈し、食料主権を放棄しつつある。そして、競争と経済成長という逆流(破線の方向)を突き進んでいる。

ところが、隣の韓国では、ソウル市は2021年から全小中高の学校給食を有機食材にする。韓米経済協定のISDS条項(*2)によるアメリカの訴追をかわすために給食法の文言を「地産地消食材」から「有機食材」に変えた。世界的な逆流に抗して、次世代の健康を守る課題に官・民一体となって取り組んでいる。

 

  • 2020年は月刊『食べもの通信』創刊50周年

を迎える。 農業と食料と医療・健康をつなぐ学習で培ってきた草の根運動は「生活感覚によって、環境容量のこれ以上の拡大を必要としない方向で生き始めている」若い世代とつながりだしている。

Iターン就農の若い人は「反対するだけでなく自分のできることや希望を出すことが大事と感じた」

と(*3)。また、発足45年目で世代交代をしつつある枚方食品公害と健康を考える会(やさいの会)の若いスタッフは「真理や正義であっても価値観の押しつけではなく自発的な気づきを促すために周りが変わることが遠回りのようで確実な方法なのかも」

(*4)と。いずれも、実践の中での気づきを自分の言葉で肯定的に語っている。

 

  • 日本の農・食・健康問題は農薬や遺伝子組み換

え・ゲノム編集食品などから母体と胎児の健康を守るために「予防原則」(*5)に立ち、「現時点の経済条件より、未来の健康条件を優先」することが迫られている。この分岐点にある2019年の参議院選挙の教訓では、「市民要求運動を日常的に(島根・鳥取一人区)」という報告に注目したい。

 

○また、学習による〈理解・気づき・納得の度合い〉は、一般には〈読む・聞く〉で23割、〈しゃべる・対話〉で5割、〈体験〉で79割といわれているが、この傾向はさらに強まっていると思う。

この点からも、逆流の指摘にとどまらず、日常的な生活要求運動と学びを通じて、消費生活者が農業問題、気候危機に〈自分ごと〉として向き合える真の食の主権者、当事者になる事が求められている。

〈であい・まなび・ひろがる〉をテーマに、農業者と若い人たちとともにワクワクしながら〈何ができるのか〉にむかって、2020年以降を歩みたいと思っています。

 

(*11838年ベルギー人フェルフルスト(人口論)が提起し、1919年アメリカ人パール(生物学)により再発見。

(*2ISDS条項――経済協定締結国間で投資家の不利益が生じたとき、投資家が相手国を提訴できる。

(*32019年「第10回『食べもの通信』関西読者会・種子法廃止でどうなる私たちの食料と健康」参加者感想文より。

(*4)「第47回日本有機農業研究会全国大会・全国有機農業のつどい2019in琵琶湖」分科会報告(『土と健康』201989月合併号)より。

(*5)「予防原則」――「将来、人体や環境に取り返しのつかない被害が予想できる場合、科学的な検証の不十分さを理由に、現時点での行政的な予防措置を先送りしてはならない」――1992年・国連環境開発会議(地球サミット)採択の「環境と開発に関するリオ宣言」第15原則

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