万里さんの「情報プラットフォーム」

1.「食べもの通信」ML読者会「風ねっと」
2.「腸が教える食と農」(「滋賀民報」連載)
3.農業・食糧カフェ
4.アーユルヴェーダに学ぶ
<< March 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
インド伝承医学・アーユルヴェーダ『チャラカ本集』って何?
 2011年5月にせせらぎ出版から発行された『チャラカ本集』を購入された方にはすでにカタログで届いている「いま 『チャラカ本集』がおもしろい―治療医学から健康医学へ」を再録します。
「『チャラカ本集』のかじり方」と前後しますが、あしからず。

       初出: 日本アーユルヴェーダ学会発行「アーユルヴェーダ通信」(タブロイド版)
                                      第21号 2011年2月5日

いま『チャラカ本集』がおもしろい!        

治療医学から健康医学へ          山崎 万里(母性史研究者)

 

 昨秋、伯母を96歳で亡くした。その数日前に医師から「心臓停止後3分以内に人工呼吸器を装着すること」について問われた。装着した場合、自発呼吸が起こらなかったらはずせないことを後で知った。「なぜ医師はこの事を告げなかったのか」疑問だ。

 人工呼吸器、胃ろうを装着して生かされ続けている人が何万人といる。多くは患者が意志表明できない中で、装着の是非をめぐって「食とは?いのちとは?幸福とは?」を立場の異なる人たち(医師、看護者、家族)が話しあわなければならない。また、世界保健機関の報告では、この半世紀に先進国では精神病床の数が減っているのに、唯一日本は増えつづけている。21世紀日本の人間の肉体と精神をめぐる現実の一面である。

健康な日常と季節のすごし方とともに、「そもそも人間とは?」「そもそも生命とは?」

を考えることが求められています。

(1)食とからだの最古の学術書

『チャラカ本集・総論篇』には、アーユルヴェーダ(アーユス・生命、ヴェーダ・知識)は、創造主ブラフマー神が説いた「健康人にも病人にも最上の道である病因論と症候論と治療論を備えた学問である」、また、「『チャラカ本集・総論篇』はアグニヴァーシャが著し、チャラカが改訂した」と書かれている。全篇を通して、アグニヴァーシャが報告し、多くの聖仙、医師、王たちが議論し、尊者アートレーヤが結論を述べる形をとっている。

(以下、同封の『チャラカ本集』カタログの目次参照)

 カタログの目次の7.「飲食物に関する四章群」の第25章「人間と疾患の起源」では激論が行われている。「有益な食物と有害な食物の定義」について、アグニヴァーシャが「量、時節、調理法、土地、体質、病状、体調の違いで、有益な食物と有害な食物が正反対の効果をもたらすのを経験するが」と質問した。アートレーヤの結論は「身体要素(ダートゥ)の均衡が崩れたときは平衡状態にもどすような食物が有益な食物である。その反対のものが有害な食物である。」(「適合状態であれば健康な人を形成する要素と同じ要素が不適合状態になれば、病気を起こすのである」)。これにアグニヴァーシャが「そのような説明では、大多数の医者は理解できません」と応じる。そこで、有益、有害な食品、健全な食事、不健全な食事の判断について具体例をあげて説明していくことになり、それが第26章〜第28章である。

また第12章「ヴァータの長所と短所」では、討論に対してアートレーヤは「皆が言ったことは、包括的な説明はしていないという点を除けば、すべて正しい。」とまとめている。

アーユルヴェーダの人体観、疾病観を知れば、この「まとめ」の正しさが分かります。

(2)timeは人体の構成要素

第1章「長寿を…」の「生命とアーユルヴェーダ」では生命を「身体、感覚器官、精神、我(アートマン、self)の結合したもの」と定義し、「世界を構成する6つの原理」では、「空、風,火、水、地、我、精神、時間time、方角が物質を構成する」と定義している。つまり、人体の異常である病気を診断し、治療法を判断する要素に「時間」が入っていることに留意すれば、アートレーヤの言う「その場合、場合によって『正しい』に違いがあって当然」と言うことになります。

ついでに、今回の日本語訳では、timeを時間、時節、季節と区別して訳されている。これによってtimeは人体の構成要素であることが一層分かりやすくなっています。

 第1章の「病気と健康」、第11章「3つの探究」で、「3種類の病因」は「時time、理性、感覚対象の3種との、それぞれ過誤、過小、過度の3種の接触の仕方をすることである。」と書かれている。引用が続くが、5.「疾患に関する4章群」第20章「主要疾患の章」では「診断の重要性」の項で「疾患の鑑別法を知り、すべての治療法を熟知していて、場所placeと時節timeを正しく計ることに精通している医者は必ず成功する」とまで言っている。第6章「人が食べたもの…」の「季節timeとの順応」の項では一年は6季に区分され、「厳冬、春季、夏季の3季は火要素が優性な吸収期で、雨季、秋季、初冬の3季は冷性が優勢な放出期。人間の体力は放出期の初期と吸収期の終期に弱くなり、両期の中間期には中程度となり、放出期の終期と吸収期の初期には最高となる。」「季節の健康法」の項では各季ごとの健康法が述べられ、季節に順応することが説かれる。

 timeと人間を切り離さないことは分かるが、「過誤、過小、過度の接触の仕方」についてはどうだろうか。一例をあげると、最初に引用した第25章の「有益な食物と有害な食物の定義」の項で、激論の末に具体例「155項目の最重要事項」を列記している中に「眠気を起こすものに過剰睡眠」をあげている。

紀元前7世紀ごろ、釈迦の時代(紀元前4〜6世紀)より前に、インドの偉大な聖人たちが激論したこの難問については、現在では世界的な免疫学者・安保徹(新潟大学大学院教授)の著書『免疫革命』他が明解に応えています。                        

(3)排泄、浄化が治療の基本

アーユルヴェーダで一番感嘆するのは、人体をチクワのような一本の管と捉えていることです。第7章「生理的衝動を我慢してはいけない…」の章では「老廃物の通路は身体下部に肛門と尿道の2つ、頭部には7つ、全身には汗腺開口部が無数にある」「この通路は排泄物が悪化して生成量が増加すれば塞がれる」とし、老廃物の増減と治療法を。第8章の「健康と病気」では「病気とは7つの身体の構成要素(ダートゥ)の不均衡のことであり、健康とはこれらの要素が均衡していることを指す」と定義。7つの身体構成要素とは、3つの身体的ドーシャ(ヴァータ、ピッタ、カパ)、3つの精神的ドーシャ、老廃物(マラ)である。老廃物が構成要素? 老廃物とは?

第11章の「3種類の療法」の項では身体のドーシャが増悪した場合に施される薬剤による体内浄化法、マッサージや発汗法などによる体表浄化法、切開、縫合、腐食法(クシャラ・スートラ)、ヒルなどの外科療法があげられている。人体の健康を老廃物の増悪、増減からとらえ、排泄、浄化を治療の根本におく人体観は私の長年の排便教育の学びとも一致しています。 生体移植に見られるように、脳や心臓を人体の中枢とみるような人体観が優位である現代医学に、人体の中枢を内肺葉、腸とする(胎児の個体発生の順序からみても正しい)この見解は一石を投じることになるでしょう。

(4)病気治療もエステも食から

.「健康法に関する四章群」第5章「適量を食べる…」の章、「食事の適量とその尺度」

「適量の食事の効果」の項では「適量の食事をすると、人は正常な状態を乱すことなく確実に体力や色つや、幸福な人生を得ることになる」。6.「栄養管理に関する4章群」第21章「8種類の非難に値する者」では肥満とやせの定義、原因と症状、治療方針、予防について。第22章「身体減量法と身体増強法」では療法の定義、用いる薬剤、実施法について。第23章「過剰栄養」では栄養過剰と栄養不足による病気と治療法について書かれている。食べ方は生き方であり、育て方でもあります。

(5)アーユルヴェーダの目的は幸福な長寿

.「飲食物に関する4章群」第24章「適切に造られた血液」の「人に体力と色つやと幸福な長寿を与える」をはじめ、「健康は幸福であり、不健康は不幸である」、「トリ・ドーシャの正常が至高の幸福を人に与え、異常は人に大きな苦難を与える」と書かれている。アーユルヴェーダの病気治療は、人間の幸福の追及が目的だと言っているようです。

第11章「3つの探求」では「生命、富、来世の探究」をあげ、「生命を維持する資力なしに長生きすることほどみじめなことはない。資力を得る手段として職業につき、働くこと」をあげ、「この世で精神に安楽や苦痛をもたらすものは、3種類『(義務(徳)・利益(富)・願望(快楽))』の人生の目的以外にない」と断言している。つまり、人生の目的そのものが、この世の安楽と苦痛をもたらすのだといっていることになります。

(6)医療現場への課題提起

 3.「基本事項の訓示に関する四章群」の第9章「治療の四本柱の概略」では「治療の四本柱と健康、病気、治療の定義」の項で四本柱として医者、治療薬、看護人、患者をあげ、そのうち医者が最重要である理由をあげている。「意識障害」をドーシャの状態で説き、「油剤法や発汗法を施した後に5種の浄化療法(パンチャカルマ)を行う」のも興味深い。

 

このたび上製本としてあらためて出版される『チャラカ本集・総論篇』は、訳者がどんなに苦労されたかと同時に、どんなにかワクワクされたであろうと思える偉業です。

訳者に感謝しつつ、ワクワクの一端を伝えることができたでしょうか。浅学と独断と偏見をお許し下さい。

(文中の目次はカタログの表記を使ったので、現物の『チャラカ本集・総論篇』の翻訳表現とは多少異なるところもある)

 

コメント
from: 平田智子   2011/10/17 11:24 AM
ファションな時計新入荷!
いつもお世話になります!(*^v^*)
当店は素敵な腕時計,バックコーピ品を経営します。
弊店の主な経営のブランド【ルイヴィトン、ロンジン、ティソ、パネライ、シャネル、グッチ、
ロレックス、ブルガリ、オメガ、等。】
送料無料(日本全国)!
サポート体制も万全です。スタイルが豊富で。
最新作も随時入荷いたしております。
ご安心購入くださいませ。

http://InFoSeek.mAg22.nEt

コメントする









 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
 

(C) 2024 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.